インタビュー記事紹介

  • ■ 「CCM」コンピューターカラーマッチング設備 導入記事

    北海シーリング株式会社(札幌市西区発寒、●011・665・1271)は、効果的な設備投資により合理化を実現。昨年9月にもCCM(コンピューターカラーマッチング)と計量装置などを導入し、調色作業を自動化した。目的は「調色作業の時間削減による合理化」と「インキの作製ロスの抑制によるコスト削減」。導入後に感じた利点や、設備投資を成功させる判断ポイントに迫った。

    同社では1日につき3、40色の特色を作製している。システムを導入するまではオペレーターが経験と勘によりハンドメードで調色していた。調色作業は、実際の調色時間は5分程度だったとしても調整を繰り返すと、1色あたり30分程度はかかってしまう。システムを導入し自動化を図ったことで、リピートであればすべての作業が5分程度で完了できるようになった。

    それでも同社の強みは全員がハンドメードで調色できることだという。いくら自動化しても、材質や環境によって色が一発で調色できないことは珍しくないからだ。その都度オペレーターが微調整するのだが、補正した配合データはシステムにフィードバックしている。

    印刷機のメーカーや機種によって、印刷される色目が異なる。調色を自動化することで、労力や時間、コストを削減できても、人の目と手による補正は必要になる。同社では印刷機のオペレーターから1人を調色専門の担当に据えた。

    有原常貴社長はこの理由について「自分で印刷機を動かしたり、特色インキを練った経験がないと刷り色が想定できない。調色の自動化のメリットを一層生かすためには、ある程度の経験と知識は必要になるのでは」と話す。

    「品質の安定化」も実現できるが、こと同社に関しては前述のとおりすべてのオペレーターがハンドメードで調色できたため、過去に苦労してきた経験はないようだ。10年、20年のキャリアを持つオペレーターも少なくなく、従業員の定着率はよい。顧客からの色に対するクレームは非常に少ないので、品質面での自動化の利点は、こうしたよい部分をさらに強固なものにしたいという方針のあらわれになっている。

    一方、システム導入による「コスト削減」の効果は大きい。同社では最終的に材料ロスを現在の半分程度まで抑えたい考えだ。資材コストが上昇しているさなかだが、これが実現できれば業績面では大きな貢献だ。

    「インキのロスを調べてみると、本当に驚く量を廃棄している。極端に言えば、作製した量の半分近くを捨てているイメージ。特色を作った際に、使用量より余分に作って在庫しておくのだけれど、結局使わない。余剰在庫は増えるし、容器も邪魔。中にはハンドメードの調色に失敗して捨てる分もある」

    「配合をデータ化しておけば、足りなくなってもすぐに作れるからストックする必要はない。廃棄コストも削減できるし、工場内のスペースも有効利用できる」(有原社長)

    この自動化システムはUVインキ専用であるため、今後は酸化重合インキで印刷する仕事の一部をUVに変えるなどして、稼働率を向上させる考えだ。

    新色の調色について時間短縮を図り、合理化を進めている。当然、配合データも集積されるので、運用するに連れて効果は出てくるに違いない。

    最後に有原社長に設備投資の姿勢について聞いた。

    「石橋をたたいてたたいて、ギリギリのタイミングまで我慢する。設備投資は企業の存続を左右するもの。成功すれば繁栄をもたらし、失敗すれば足かせになる。身の丈に合った最大限の設備をすることが目標。そのためには情報収集が重要。先端の知識を持っていないと、市場では取り残されてしまう。真新しい生きた情報を得ている会社が厳しい時代でも事業を続けていける」

    不況下では投資ミスは許されない。しかし動かなければ成長はないし、活性しないことがかえって衰退を生むだろう。

    それでも機械を導入すればもうかる時代は終わってしまった。機械を動かす人、導入時期を決める人の判断が成否を分ける。

  • ■ 「SMP」大型凸版間欠輪転機 導入記事

    北海シーリング株式会社(札幌市西区発寒、有原常貴社長、●011・665・1271)は昨年9月に、三起機械製の凸版間欠輪転機「SMP」(4色機)を導入。07年に導入した大日本スクリーン製造のCTP「FX870」と組み合わせ、一層の印刷の高精細化に取り組んでいる。新機種導入の経緯や利点、運用状況をリポートする。

    「SMP」は、既設の半輪転機「R-50」(岩崎鉄工製)を更新することになり、その後継として候補にあがった。「R-50」は270㍉幅までの粘着紙を印刷することができ、また箔押しユニットを連動していた。同社では、この要求を満たすとともに、戦略的な付加価値を併せ持った機種導入を検討。3カ月ほど考慮した後、導入に踏み切った。

    機種選定に時間を要さなかったのは、「SMP」が従来の間欠輪転機が抱える問題点をある程度クリアしたと感じたからだ。紙の蛇行が抑えられ、見当精度が高く、生産性の向上や合理化がはかれると期待をもった。

    有原社長は導入後の印象について語る。

    「精度がいい。ユニットごとの独立サーボによる駆動が、見当の狂いを解消している。紙の蛇行も抑えられている。操作性もよく、現場に優しい印刷機だと思う」

    「広幅なので多面付けができ、コスト削減や効率化に寄与している。精度の高い腐食刃での抜き加工も施せるため生産の合理化が果たせる」

    気になるのはCTPと印刷機とのマッチング。版と印刷機の相性が再現の良しあしに直結する。

    すでに同社では新版の8割程度をCTPに移行した。アナログ時代には調子が合わないといったトラブルも解消され、ロス削減や納期対応にも結びついている。

    「SMP」によるCTP版を使った印刷では、相性のよさが非常に実感できた。より高い精度で満足のいく仕上がりが得られるようになった。スリットなどの具合で紙が蛇行した場合も、蛇行修正の装置が付属しているので問題はない。

    CTP導入によりタイトな生産計画でもスムーズに運ぶようになったため、多くの仕事を取り込んでいる。また再現性が向上したことで、オフセット印刷の外注分が内製化できたというのも大きな利点だ。

    コスト面でも月額で数十万円分を削減。仕上がりが予見できるようになったため、印刷直前に版をつくり直すようなこともなくなった。CTPへのシフトは、業績に大きく寄与した。

    有原社長は「日常業務でFMスクリーンを使用する頻度も、当たり前といえるほどになった。将来的には平網で400線程度の印刷にも挑戦してみたい。景気の悪さに必要以上にとらわれず、先を見据えて低コストなり作業性を高めるような対策を講じるべきだと考える」と意欲を示している。

  • ■ 第17回シール・ラベルコンテスト受賞記事

    北海シーリング株式会社(札幌市西区発寒、●011・665・1271)は全日シール連主催の「第17回シール・ラベルコンテスト」で2点を出品し、経済産業省商務情報政策局局長賞と優秀賞を受賞。また、ベルギー・ブリュッセルで開催された「第19回世界ラベルコンテスト」でも、レタープレス(カラープロセス)部門で審査員特別賞の栄誉に輝いた。レタープレスCTPとFMスクリーン技法による高品位印刷が、国内外に評価された。「いろいろな要素がマッチして奇跡的な仕上がりに結びついた」と語る有原常貴社長に、受賞作品の評価とCTP導入で得たメリットについて聞いた。

    レタープレスによる印刷に関する自分の知識と経験が生かせたと感じています。特に猫(全日本ラベコン・局長賞、世界ラベコン・審査員特別賞)は、審査員の方々から高い評価を頂きました。いろいろな要素がうまくマッチングして、奇跡的な仕上がりに結びついたというのが正直な感想です。

    土壇場で何とかした感じです(笑)。

    テーマを考えるうえで「FMならいまが旬だし、外せない」という思惑も当然、ありましたし。

    それでもいま思えば、書体をもっと見やすいものに直しておきたかったなど、いくつかの反省点もあります。

    FMスクリーンに向いているデザインというのがあると思います。

    淡い単色の表現は抜群だと思います。デザインに対し、非常に忠実に再現できます。

    逆に濃度の高い掛け合わせのグラデーションは苦手かもしれません。濃度が高くメリハリのあるデザインだと、FMでは若干インパクトに欠けるのではないでしょうか。

    山(優秀賞)の方は濃度を高くしてみようと思いました。一見、網点がつぶれていそうですが、ルーペでみるときれいな形状を残しています。

    これは機械の性能に依存する部分が大きいと思います。CTPと印刷機のマッチングも重要になるでしょう。

    昨年1月に「PlateRite FX870」(大日本スクリーン製造製)を導入しCTPに移行しましたが、アナログ製版で培ったノウハウがあったからこそ、高細線印刷が可能になったと自負しています。

    「Fairdot2」というAM/FMのハイブリッドスクリーニングを使用しています。

    FMの評価はソフト発売と同時に行いました。

    今回のラベルコンテストでも確かな効果があることが証明できたことから、日常業務でも徐々にFMへの切り替えを進めているところです。

    凸版固有の中間色が上がる特性が抑えられます。それに加え、グラデーションの範囲が広域になります。

    さらにデータの濃度調整が容易なことから、デザイン段階で印刷物の仕上がりが予見しやすくなることなどを実感しています。

    CTP導入によるフイルム出力工程の内製化で、品質向上はもとよりコスト削減にもつながっています。今後も、この傾向をさらに強める方針です。