インタビュー記事紹介

  • ■ 「SMP」大型凸版間欠輪転機 導入記事

    北海シーリング株式会社(札幌市西区発寒、有原常貴社長、●011・665・1271)は昨年9月に、三起機械製の凸版間欠輪転機「SMP」(4色機)を導入。07年に導入した大日本スクリーン製造のCTP「FX870」と組み合わせ、一層の印刷の高精細化に取り組んでいる。新機種導入の経緯や利点、運用状況をリポートする。

    「SMP」は、既設の半輪転機「R-50」(岩崎鉄工製)を更新することになり、その後継として候補にあがった。「R-50」は270㍉幅までの粘着紙を印刷することができ、また箔押しユニットを連動していた。同社では、この要求を満たすとともに、戦略的な付加価値を併せ持った機種導入を検討。3カ月ほど考慮した後、導入に踏み切った。

    機種選定に時間を要さなかったのは、「SMP」が従来の間欠輪転機が抱える問題点をある程度クリアしたと感じたからだ。紙の蛇行が抑えられ、見当精度が高く、生産性の向上や合理化がはかれると期待をもった。

    有原社長は導入後の印象について語る。

    「精度がいい。ユニットごとの独立サーボによる駆動が、見当の狂いを解消している。紙の蛇行も抑えられている。操作性もよく、現場に優しい印刷機だと思う」

    「広幅なので多面付けができ、コスト削減や効率化に寄与している。精度の高い腐食刃での抜き加工も施せるため生産の合理化が果たせる」

    気になるのはCTPと印刷機とのマッチング。版と印刷機の相性が再現の良しあしに直結する。

    すでに同社では新版の8割程度をCTPに移行した。アナログ時代には調子が合わないといったトラブルも解消され、ロス削減や納期対応にも結びついている。

    「SMP」によるCTP版を使った印刷では、相性のよさが非常に実感できた。より高い精度で満足のいく仕上がりが得られるようになった。スリットなどの具合で紙が蛇行した場合も、蛇行修正の装置が付属しているので問題はない。

    CTP導入によりタイトな生産計画でもスムーズに運ぶようになったため、多くの仕事を取り込んでいる。また再現性が向上したことで、オフセット印刷の外注分が内製化できたというのも大きな利点だ。

    コスト面でも月額で数十万円分を削減。仕上がりが予見できるようになったため、印刷直前に版をつくり直すようなこともなくなった。CTPへのシフトは、業績に大きく寄与した。

    有原社長は「日常業務でFMスクリーンを使用する頻度も、当たり前といえるほどになった。将来的には平網で400線程度の印刷にも挑戦してみたい。景気の悪さに必要以上にとらわれず、先を見据えて低コストなり作業性を高めるような対策を講じるべきだと考える」と意欲を示している。

  • ■ 第17回シール・ラベルコンテスト受賞記事

    北海シーリング株式会社(札幌市西区発寒、●011・665・1271)は全日シール連主催の「第17回シール・ラベルコンテスト」で2点を出品し、経済産業省商務情報政策局局長賞と優秀賞を受賞。また、ベルギー・ブリュッセルで開催された「第19回世界ラベルコンテスト」でも、レタープレス(カラープロセス)部門で審査員特別賞の栄誉に輝いた。レタープレスCTPとFMスクリーン技法による高品位印刷が、国内外に評価された。「いろいろな要素がマッチして奇跡的な仕上がりに結びついた」と語る有原常貴社長に、受賞作品の評価とCTP導入で得たメリットについて聞いた。

    レタープレスによる印刷に関する自分の知識と経験が生かせたと感じています。特に猫(全日本ラベコン・局長賞、世界ラベコン・審査員特別賞)は、審査員の方々から高い評価を頂きました。いろいろな要素がうまくマッチングして、奇跡的な仕上がりに結びついたというのが正直な感想です。

    土壇場で何とかした感じです(笑)。

    テーマを考えるうえで「FMならいまが旬だし、外せない」という思惑も当然、ありましたし。

    それでもいま思えば、書体をもっと見やすいものに直しておきたかったなど、いくつかの反省点もあります。

    FMスクリーンに向いているデザインというのがあると思います。

    淡い単色の表現は抜群だと思います。デザインに対し、非常に忠実に再現できます。

    逆に濃度の高い掛け合わせのグラデーションは苦手かもしれません。濃度が高くメリハリのあるデザインだと、FMでは若干インパクトに欠けるのではないでしょうか。

    山(優秀賞)の方は濃度を高くしてみようと思いました。一見、網点がつぶれていそうですが、ルーペでみるときれいな形状を残しています。

    これは機械の性能に依存する部分が大きいと思います。CTPと印刷機のマッチングも重要になるでしょう。

    昨年1月に「PlateRite FX870」(大日本スクリーン製造製)を導入しCTPに移行しましたが、アナログ製版で培ったノウハウがあったからこそ、高細線印刷が可能になったと自負しています。

    「Fairdot2」というAM/FMのハイブリッドスクリーニングを使用しています。

    FMの評価はソフト発売と同時に行いました。

    今回のラベルコンテストでも確かな効果があることが証明できたことから、日常業務でも徐々にFMへの切り替えを進めているところです。

    凸版固有の中間色が上がる特性が抑えられます。それに加え、グラデーションの範囲が広域になります。

    さらにデータの濃度調整が容易なことから、デザイン段階で印刷物の仕上がりが予見しやすくなることなどを実感しています。

    CTP導入によるフイルム出力工程の内製化で、品質向上はもとよりコスト削減にもつながっています。今後も、この傾向をさらに強める方針です。

  • ■ ラベル業界CTP元年 何が変わるのか?

    北海シーリング(株)(札幌市西区発寒11条、有原常貴社長、●011・665・1271)はこのほど、大日本スクリーン製造の樹脂凸版CTP「PlateRite (プレートライト)FX870」を導入。さらにカラープルーフにキヤノンの複合機「imagePRESS(イメージプレスC1)」を設備投資し、プリプレスのシームレス化に向け動き出した。本紙では同社のデジタル化のねらいと運用方法についてリポートする。

    ようやくデジタル版を含むCTPの周辺環境がそろった昨年、複数の関係者はそう断言していた。それを裏付けるべく、樹脂凸版のCTP化に関するラベル印刷会社の検討は現実味を帯びているようだ。北海シーリングでは、数年前からCTP導入を検討してきた企業のひとつ。同社では1月末に「プレートライトFX870」を導入したばかりだ。これまで外注していたフイルム出力工程を内製化した。カラー受注の増加とともに増大する出力コストはCTP導入による内製化により大きく削減できる計算。さらに直接、版を作製することで、納期対応も可能になった。しかし、本当の効果は「コスト」でも「納期」でもなかった。有原社長はCTP導入のねらいについて、品質面を強調する。

    「今回の設備投資で一番の目玉は『品質の向上』にあると言えます。グラデーションの表現や薄い網の再現性の高さは抜群です。オフセット印刷との差が埋まるのではないかと思います」。CTPによる再現についてメーカーは「1%の網点から再現できる」とうたっている。アナログ製版では2~3%程度が日常業務のレベルで再現できる限界だけに、限りなく1%に近いレベルをコンスタントに再現できる恩恵は非常に大きい。デジタル化のメリットは、高レベルの樹脂版を安定してつくることができるという点に尽きるのではないだろうか。

    有原社長は「刷版に関してコントロールが容易になることがデジタルの強み。CTPは露光時間が多少、前後する程度では、アナログで生じたようなドットゲインの問題はありません」と評価する。

    潜在的なロスを削減するのにCTPが果たす役割は大きい。しかしCTPを導入しただけで、顧客が期待するだけの品質を生み出せる環境が整ったというには余りにも不十分だ。

    同社ではCTP化を機に、新たなワークフローの構築に着手。カラーマネジメントを推進し、他社との差別化戦略を打ち出している。

    有原社長は「当社の顧客には一般印刷会社も多く、こうしたお客様の中には、凸版を使ったラベルのカラー印刷に対して『色の管理は一般印刷に劣っている』という認識をお持ちです。当社が『イメージプレスC1』を導入し、色校正の環境を整えることで、こうした偏見が少しずつ薄らいでいくことに期待しています」と語る。

    同社では今後、16台ある印刷機の大半を生産性が高く小ロットにも対応できる間欠輪転機に移行し、合理化を推進。CTPとカラーマネジメントを核としたワークフローを構築する。

    カラーマネジメント環境の整備により、将来的にはCMYKの色再現域にとらわれない印刷技術にも挑戦する考えだ。

    その背景には、6色や8色などインクジェットプリンタの多色化により目の肥えた消費者ニーズがある。

    デジタル化は、顧客を満足させるために不可欠な選択肢だった。デジタル化の進展により実現する技術がアナログの限界を超えたことで、新たな目標がみえてきた。

    有原社長は「ラベル業界ではデジタル化を恐れていた時代がありましたが、私は、それをいかに味方につけるかということを考え続けていました。印刷物の良しあしは大抵、版の仕上がりで決まります。CTPを入れたんだから、それをフルに生かせる環境にしなければいけないわけです。凸版にこだわり、品質に関しては全国で勝負できるようになりたい」と抱負を語った。