インタビュー記事紹介

  • ■ 『危機管理を学び未来へ繋ぐ』 北海道シール印刷協同組合 理事長 有原常貴

    新年明けましておめでとうございます。関係各位の皆様には、日頃より組合運営に格別のご支援ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。 また、昨年9月に発生した『北海道胆振東部地震』に際しては、連合会の皆様より励ましのお言葉やご支援のお申し出をはじめ、協賛会各社様より迅速なご対応と手厚いサポートを頂きましたこと、感謝と共に当組合員として未だ大変心強く思うところです。誌面にて失礼ながら、心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

    さて昨年の北海道は、6~7月の天候不順で晴れの日が少なく農業は不良、水産は近年の低迷状態が続くなか、観光入込客数の増勢持続、個人消費や設備投資の堅調さなどから、全体としては持ち直し基調を維持しており、当業界も年末に向けては期待できるとの見通しでした。しかし、9月の地震で直接的な被害は少なかったものの、全道一斉停電があり、物流停止や観光客のキャンセル、また公表の被害額には表れていない各事業社での損害も大きく膨らんだ模様です。この災害により失ったものはありましたが、「北海道」命名150年目に計らず得た経験のなかで、信号が機能しない交差点で温かく譲りあうドライバーや、車のバッテリー電源で営業する、薄暗いコンビニエンス店に響く店員の明るい声に触れました。今後組合・一事業社として危機管理を学び北海道の地を守り、ここで育まれた思いやりの心も未来へ繋ぐことが大きな責務だと思うところです。

    当組合新年臨時総会の勉強会では、`89年、`97年の2度南極観測隊員に選ばれ、地球上最も過酷と言われる平均気温-57℃で越冬した経験から『面白南極料理人』・『身近なもので生き延びろ-知恵と工夫で大災害に勝つ』など多数の著書を上梓された〝西村淳氏〟による講演会を行い、また全日シール連合会と協賛会の皆様との情報交流を深め、シールラベル業界を守る組織として団結して参ります。新たな年は災害がなく穏やかで、皆様にとって大きな飛躍の年になります様、心からお祈り申し上げます。

  • ■ シール・ラベルコンテスト 受賞企業に聞く 北海シーリング

    全日本シール印刷協同組合連合会(田中祐会長)主催の「第28回シールラベルコンテスト」で、北海シーリング㈱(札幌市西区発寒、有原常貴社長、電話 011・665・1271)は経済産業省商務情報政策局長賞を獲得。2年ぶりの応募となる今回は、新たに「チェンジング箔」を採用したラベルで挑戦し、その高い技術力が認められる結果となった。受賞作品で採用した技術と、同コンテストに対する〝想い〟をリポートする。(内田)

    同社では現在に至るまで、全社を挙げてラベル製造に関する技術力向上とノウハウの蓄積に注力。その一環で、シールラベルコンテストへの応募も推進しており、第26回では優秀賞を得るなど、オペレーターのスキルは着実に伸長している。特に今年から「CPT(コンテストプロジェクトチーム)」を設立。日ごろの業務で製造したラベルの中から優れた製品を複数リストアップし、実際に委員会で審査を重ねた上で本番に臨んだ。

    なおコンテスト応募にはこれまで、有原社長が中心となって取り組んできたが、今回はあえて携わらず、田中大輔工場長をはじめ、CPT主導で挑むことに。田中工場長は、コンテストに際して「当社は前々回に優秀賞を獲得し、前回は諸般の事情から応募を見送った。『技術優良工場』認定制度に基づくと、今回の入賞を逃した場合、優良工場の資格を失効する。そのような状況で、社長の力を借りず、社員で取り組むことになったため、責任は重大と認識していた。それだけに、前々回以上の賞を獲得できたことは、社員にとっても大きな経験を得ることができた」と振り返る。

    経産省商務情報政策局長賞を受賞した作品は、北海道で高い認知度を誇る洋菓子メーカーの㈱ベイクド・アルルが北海道開拓150周年を記念して販売した「北海道純白ロール」のデザインにアレンジを加えたもの。ラベル中央に箔押しされた北海道を、上部には道開拓150周年を意味するマークを配置。さらに北海道をイメージさせるイラストが四隅にデザインされている。有原社長は「北海道のラベル印刷会社として、コンテストの応募にふさわしいデザインだっただけに、上位賞の獲得は素直にうれしい」と顔をほころばせる。

    応募部門は自由課題の「レタープレス」で、凸版間欠機を活用し、合成紙にCMYK+ニスの5色印刷と箔押しを加工。ニスは樹脂凸版を活用し、アイヌ伝承の文様を効果的に塗工しているほか、北海道がデザインされた箇所には同社初の試みとなる複雑な図柄のチェンジング箔を加工したことにより、視覚的効果を盛り込んだ。

    印刷ならびにニス加工の製版は、CTPによる自社製版。175線のAMスクリーンながらも、細かい文字の掛け合わせや細かい網点などで再現性の高い印刷を実現しており、全日シール連の技術・特許委員会による講評でも「購買意欲をそそるラベルに仕上がっている」との高評価を得た。

    一方、チェンジング箔については「過去にもこの技術を手がけたケースがあったが、その時は満足のいく仕上がりとはならなかった。だからこそ今回は、そのリベンジという意識で取り組んだ。チェンジング箔は難しく、印圧が強くなり過ぎると模様がつぶれてしまい、また版温度のコントロールが適正でないと、視覚的効果が得られないといった課題がある。当作品を手がけたオペレーターはキャリア25年以上のベテランで、チェンジング箔の加工に絶妙のバランスによる再現性を可能にした」(田中工場長)と説明する。

    同コンテスト参加の意義について、田中工場長は「当社のラベル製造に関する技術レベルが、全国のラベル印刷会社の中でどのポジションに位置しているかを確認できる絶好の機会と考えている。コンテストを通じて当社の技術力に対する底上げに努めたい」とコメント。

    また、有原社長は「上位賞を受賞した技術力をもっと内外へアピールする予定。個人的に、受賞企業は付加価値の高いラベル製造にも対応できる〝企業のブランド訴求力〟といった点で効果が大きいと認識している。これからもコンテストへの応募に際しては、常に最高位の経済産業大臣賞を狙っていきたい。その先には、ラベル印刷業を営む企業としての成長がある」と、今後の抱負を語った。

  • ■ 『訪問!技術優良工場を歩く』 北海シーリング株式会社

    「道内基幹産業の柱である水産では鮭、サンマ、イカ、ホタテなど全体で漁獲量が減少している。これの影響で、水産加工品に関わるシール・ラベルを含む関連資材の需要が減少している状況だ」 「訪日外国人は一時期の爆発的な増加から一旦落ち着いたものの、海外のLCCを中心に新千歳への就航路線が年々増えていることから、インバウンドは好調。食品加工物などの輸出量も増加していることから、北海道経済全体ではビジネスチャンスが広がっている」

    「当社は早い段階からラベル印刷とスクリーン印刷の自社製版を行っており、印刷と製版の両輪で技術向上に努めてきた。生産設備は現在、小・大型の凸版間欠機、凸版輪転機をはじめデジタル印刷機、CO2レーザー加工機を設備。これら特徴の異なる各種印刷機のオペレーション技術も含めて、バランスの取れた製品をご提供できる体制を確保する点が当社の強みだ」 「またデジタル原稿データやインキ調色データも管理・運用して、使用機械を問わず社内で印刷するすべての製品が基本的に共通品質になるようなトータルソリューションを構築している。これがシールラベルコンテストへの入賞、ひいては技術優良工場を名乗らせていただける、当社のコアとなっている」

    「最初の応募は1991年の第2回開催。輪転のカラー印刷で協賛会会長賞をいただいた。その後、第8回(98年)でスクリーン印刷用のソフトを使用し特色分解で〝誤差拡散法方式〟、いわゆるFMスクリーンの走りの技法を用いた作品が連合会会長賞を受賞した」 「第10回(2000年)は、樹脂凸版で230線の印刷で日印産連会長賞、同年『世界ラベルコンテスト』の受賞と次第に上位へ。そんな当社の最上位は第17回(07年)、経済産業省商務情報政策局局長賞、同年の世界ラベルコンテスト受賞だ。初めてラベルコンテストに実用化した樹脂凸版のFMスクリーン印刷を出品したのは、この時のわれわれであったと記憶している。当社にとってのシールラベルコンテストは〝自社の技術レベルを確認するタイミングで応募する〟、といったイメージだろうか」

    「北海道協組の理事長として連合会の理事会に参加しているので、この制度が生まれた経緯や趣旨はよく理解している。制度の運用を通じて副次的に連合会の収入を補てんできるため、上部団体の運営を支えたいとの思いもある。JFLPの新規事業を、管理側としても取得企業としても今後醸成していきたい」

    「自社ホームページへの認定ロゴ掲示と、当社営業の名刺に同ロゴを表記している。ラベルコンテストの意味や話題作りと、当社なりの見解で自社アピールのツールにして運用中だ」  「ただ大々的にPRしておいて、次にコンテスト入賞を逃し認定取得が取れないと…というリスクを想定すると、どこか心にブレーキがかかるのも事実。取得企業の経営者には、ある程度の覚悟も必要かも」

    「社内では〝彼が獲りました〟と目につく通路に栄誉を掲示している。本人としてはくすぐったいだろうが、喜んでくれているようだ。これに喚起され、次回コンテストに出すよというときに『次はぜひ自分がやりたい』と周りの手が上がってくれれば」

    「ほぼ毎年ラベルコンテストに応募する一企業として、またかつて技術委員として実際にコンテストの審査を務めた者の雑感だが、JFLPがこれまで運用してきたいわゆる〝審査基準〟と、近年少しポイントが変わったようにも感じる」 「ラベルコンテストは技術レベルの一つの尺度として、また技術優良工場認定制度はその栄誉として。運営側であるJFLPとしては、高いレベルで印刷品質が審査できる環境を維持することが重要だと考える。それが継続できれば制度も発展していくだろう」

    「約30年に渡るシールラベルコンテストの歴史は、日本独自の高い品質レベルをお客さまと市場に浸透させる一因になったのでは。今回この技術優良工場認定制度が、社内意識と技術を高める手法として役立ち、さらに当業界のレベルを高めて他業種の参入に対抗する一つの意義ある事業になれば。認定工場を名乗る1社として、ラベル業界の国内品質を高いレベルでけん引する存在になりたい」